肛門の病気には主にどのようなものがあるのか と それぞれの違いそれぞれの特徴を解説します。
肛門の病気には主にいぼ痔(痔核)、切れ痔(裂肛)、あな痔(痔瘻)があります。
一番多いのはいぼ痔で次に切れ痔、一番少ないのがあな痔になります。

切れ痔からの痛みなどは、便が硬かったりすると誰でも一度は経験があると思います。すぐ症状が無くなる場合は心配いらない事が多いですが、肛門の奥のほうが腫れる内痔核などはひどくならないと症状がでない事が多いのと、切れ痔も繰り返すと肛門が硬くなってくる事があるので注意が必要です。また血がでてもいぼ痔や切れ痔だと思っていると大腸癌や直腸癌が隠れている場合もあるのでやはり注意が必要です。
いぼ痔(痔核)
病気のいぼ痔はもともと肛門クッションといい、膨らんでいるところが正常でもあります。その膨らみが大きくなり固定が弱くなってくると病気としてのいぼ痔になってきます。
いぼ痔のでやすい症状は出血、痛み、脱出、かゆみ、粘液の漏れ等です。
いぼ痔の有病率は4〜13%との報告1,2)ですが、いぼ痔は症状がない事も多く検査での有病率は21〜55%と報告3,4)されています。
男女差は無く、45〜65才に多いです。
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切れ痔(裂肛)
肛門の上皮が切れてしまうのが切れ痔(裂肛)になります。
裂肛の患者さんには便秘が多い報告があり、硬い便により切れて切れ痔が起こる肛門上皮損傷説と、肛門の緊張が強いために血流が悪くなり裂肛が発生する肛門上皮虚血説があります1)。
切れ痔の症状は排便時、排便後の痛みです。出血は必ずあるわけではありません。
裂肛の頻度は生涯発症率が11.1%であり2)、女性に多く3)、20〜50才代に多いです4)。
- 辻 順行.裂肛.実地医家のための肛門疾患診療プラクティス,第 2 版,岩垂純一(編),永井書店,大阪,2007:p.98-116.
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あな痔(裂肛)
肛門陰窩というところから感染を起こし膿の通り道ができてしまうのがあな痔(痔瘻)になります。
痔瘻の症状は痛み、腫れ、排膿(うみが出る)等になります。
痔瘻の発生頻度は0.0056%から0.0208%1.2.3.4.5)で、痔瘻は男性に多く1.6)、30代40代に多い7.8)です。
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